【介護と育児と共働き】掛け持ちがつらい！トリプルケア限界体験談

① 肉体の悲鳴：終わりなき消耗戦

子供の夜泣きで2時間おきに起こされ、早朝には親の介助。日中は仕事のプレッシャーと戦い、帰宅後は息つく間もなく食事の支度と寝かしつけ。この生活が続くと、身体はどうなるでしょうか。

• 慢性的な睡眠不足：厚労省によれば、睡眠不足は判断力、記憶力、免疫力を著しく低下させます。日中の眠気や気分の落ち込みは、意志の弱さではなく、脳が機能不全に陥っているサインです。
• ストレスによる身体症状：原因不明の頭痛、胃痛、めまい、耳鳴り。これらは、過剰なストレスホルモン「コルチゾール」が自律神経を乱している結果です。あなたの身体は、必死にSOSを発しています。

【結論】意志の力で乗り切れる限界を、とっくに超えています。必要なのは根性ではなく、休息です。

② 精神の孤立：「私だけ」という絶望

物理的な大変さ以上に心を蝕むのが、「誰にも理解されない」という孤独感です。

• ケアギバーズ・ギルト（介護者の罪悪感）：「もっと優しく接するべきだった」「自分のせいで親が…」といった、根拠のない罪悪感。真面目で責任感の強い人ほど、この罠に陥りやすいのです。
• アイデンティティの喪失：「〇〇さんの親」であり、「〇〇ちゃんの親」であり、「会社の〇〇さん」でもある。しかし、本当の「自分」はどこにもいない。役割に自分自身が飲み込まれていく恐怖。

【結論】あなたの苦しみは、あなた個人の問題ではありません。同じ状況の仲間は必ずいます。孤独を感じるのは、まだその仲間に出会えていないだけです。

③ 複合災害：タスクの同時多発が引き起こす「思考停止」

トリプルケアの本当の恐ろしさは、個々のタスクの重さではありません。それらが「同時に、予期せず、連鎖して」襲いかかってくる点にあります。

• 朝の出勤前：子供が熱を出し保育園から呼び出し。同時に、親がデイサービスを嫌がり、説得に30分。その間に、会社からは「今日の9時の会議、大丈夫？」という催促のチャット。どれか一つでも大変なのに、全てが同時に起こる。これは、パニックです。
• 日中の会議中：重要なプレゼンの最中、スマホが震える。画面には「学校から着信」。親のケアマネからも「至急」の留守電。プレゼンに集中できず、頭が真っ白になる。仕事の評価は下がり、自己嫌悪に陥る。
• 夕方の帰宅後：疲労困憊で帰宅し、夕食の準備をしていると、親が「体調が悪い」と訴える。同時に、子供は宿題を見てくれと泣き叫ぶ。どちらを優先すべきか、一瞬で判断を迫られる。この絶え間ない選択と罪悪感の連続が、私たちの精神を削り取っていくのです。

【結論】これは、個人の能力で解決できる問題ではありません。あなたの脳（＝司令塔）が、処理能力を超えた情報量でパンクしている「システム障害」です。解決策は、タスクそのものを減らすしかありません。

④ 家計の崩壊：見えない支出との戦い

トリプルケアは、家計に静かに、しかし確実にダメージを与えます。以下は、私たちが直面した「見えにくい支出」の例です。

【結論】節約だけでは限界があります。支出を正しく把握し、後述する「もらえるお金」で収入を増やす戦略が不可欠です。

Part 1：会社の福利厚生は、しゃぶり尽くす

これらは、育児・介護休業法で定められたあなたの「権利」です。会社が拒否することは法律違反です。知っているだけで、交渉のテーブルで優位に立てます。

① 介護休業・子の看護休暇

介護休業は、要介護状態の家族1人につき最大93日、3回まで分割して取得できるまとまった休みです。介護体制の構築や施設の選定など、初期の重要な局面で活用できます。
介護休暇・子の看護休暇は、1年間に5日（対象家族が2人以上なら10日）まで、1日または時間単位で取得できる単発の休み。通院の付き添いや役所の手続きといった、突発的な用事に最適です。

② 時短勤務・時間外労働の制限

時短勤務は、原則として1日の労働時間を6時間にする制度。子供が3歳になるまで、または要介護状態の家族がいる限り利用できます。
時間外労働の制限は、いわゆる「残業の免除」です。1ヶ月24時間、1年150時間を超える残業を拒否できます。

Part 2：もらえるお金は、1円残らず受け取る

無知は罪です。あなたが受け取れるはずだったお金が、毎年、国庫に戻っています。以下の制度は、申請しなければ一円ももらえません。

Part 3：時間と精神を”買う”外部サービス活用術

「タスクの重なり」というシステム障害を解決する唯一の方法は、タスクそのものを減らすことです。「自分でやる」という固定観念を捨て、外部のプロに委託しましょう。これは贅沢ではなく、家族を守るための「投資」です。

① 家事代行サービス

掃除、洗濯、そして最も時間のかかる「料理（作り置き）」を委託することで、平日の夜に圧倒的な心の余裕が生まれます。週に1回、3時間（約8,000円〜）利用するだけで、週末の家事負担も激減します。
【主なサービス】ベアーズ、CaSy（カジー）、タスカジなど

② 食材宅配・ミールキット

「献立を考える」「買い物に行く」という名もなき家事から解放されます。カット済みの野菜や合わせ調味料がセットになったミールキットは、忙しい日の救世主です。
【主なサービス】 パルシステム、ワタミの冷凍宅食お惣菜

③ 子育て支援サービス

ファミリー・サポート・センターは、自治体が運営する安価な相互扶助サービス。「保育園のお迎えだけ」「習い事の送迎だけ」といった、ピンポイントの依頼が可能です。
また、民間のベビーシッターサービスも、いざという時のために登録しておくと、精神的なお守りになります。

Part 4：家族を“他人”から“チーム”に変える交渉術

お金と仕事の問題に目処をつけたら、次に取り組むべきは、最も厄介な「家族」です。

① まず「敵」を知る：反対勢力の典型パターン

兄弟姉妹との交渉では、多くの場合、以下のような反論に直面します。

• 「お金がない」と言う：本当にないのか、ただ出したくないだけなのか。
• 「仕事が忙しい」と言う：時間的な貢献が無理なら、金銭的な貢献は可能ではないか。
• 「親の気持ちが…」と情に訴える：施設の利用などを、親不孝であるかのように非難する。

② 「見える化」という最強の武器

これらの感情的な反論を封じるには、客観的なデータしかありません。

• 介護費用明細：全ての領収書をスプレッドシートにまとめ、共有する。「これだけかかっている」という事実を突きつける。
• 介護タスク一覧：「通院」「買い物」「役所手続き」など、全てのタスクを洗い出し、誰が何時間担当しているかを記録する。「自分はこれだけやっている」という貢献度を可視化する。

③ 「家族介護協定書」を締結する

話し合った内容は、必ず簡単な書面に残しましょう。「誰が毎月いくら負担するか」「誰がどの役割を担うか」「今後の方針変更はどう決めるか」などを明記した、簡単な契約書です。これは、法的な拘束力よりも、「言った言わない」を防ぎ、全員の覚悟を固めるための儀式として、絶大な効果を発揮します。

あなたの「最初の一歩」アクションリスト

• ☐ 今すぐ、自分の市区町村の「地域包括支援センター」の電話番号を調べる。
• ☐ 会社の就業規則を開き、「育児・介護休業規程」のページを印刷する。
• ☐ 「家事代行　お試し」で検索し、一番安いプランを一度予約してみる。